此の頁は、コーンスネークの飼育技術手引みたいなものです。
コーンスネーク(Pantherophis guttatus)は、ナミヘビの中でも、極めて飼育が容易な部類であるとされます。筆者自身、それを否定するつもりはありませんが、飼育が容易であるという表現の意味するところは、ナミヘビ、ボア、パイソンを含めた蛇全体の飼育という総体的な観点から見た時に、最も簡単な部類に属するということであり、誰にでも出来るということを意味するわけではないと考えています。
この世の中に、誰にでも出来るなどと保証されることは、何一つ存在しようがない事は云う迄もないことですが、とはいえ、其れを押して比喩としてでしょうが、"誰にでも飼育が可能である"と表現されることすらあるほどに、本種の場合、飼育に際して習得すべき技術と知識のハードルが迚も低いところにあるのは確かです。
そのハードルの低さ� ��支えているのは、ハープタイルホビーの中でも筆頭と言ってよいぐらいの長い歴史と、飼育人口の多さから来る厖大な記録、それをベースにして交わされた議論と検証といった、ナミヘビの中でも群を抜いて蓄積された背景に他なりません。
単純な技術的蓄積だけではなく、血統の積み重ねによる蓄積――飼育下での繁殖を何代も繰り替えされた世代交代の末にあるCB(飼育下繁殖個体)は、馴致され人間の用意する飼育環境に適応した性質を受け継ぐものを多く輩出するように調整されており、結果、本来、WC(野生捕獲個体)であれば当然のように必要とされる飼育に際しての気配りや、環境や温度要求といった環境的要素の幾つかを省いた状況、つまり簡素にして簡易な環境で飼育することが可能となっているのです。
それ故に、確かに、現在のコーンスネークのCBに限れば、その飼育の知識と技術は、おそらく生物飼育の素養がない人でも熱意を持って習得しようと努めれば、時間を還元することで大抵は可能になるのではないかと思います。
此の頁は、蛇飼育のいろはを知らない人が読む事を想定して書いてみようと思っています。既に飼っている、飼った事がある、という人にはやや退屈な文章になってしまっているかもしれませんが、そういう場合は適宜読み飛ばすなり斜め読みするなり読まないなりしてみて下さい。
必要道具
先ず、コーンスネークを飼育する上で必須と思われるもの、あると便利なものを列挙して行きます。上の方にあるものほど、重要性が高い、と解釈してよいかと思います。
◇冷蔵庫
個人的には、一番必要かなという気がします。マウスを常時繁殖させて餌にする、という人以外は、冷凍マウスを使うでしょうから、専用冷凍庫は必須ではないでしょうか。購入は新生活応援フェアが各家電量販店で催される二月〜三月、それが終わった後の在庫払いがある四月が狙い目ですが、新製品が投入される前の年末商戦などでも在庫一掃が行われることもあるので、十二月あたりも見逃せません。店によって売り時が全然違うので、その辺りの見極めが大切です。
個人的に食品と一緒に冷凍庫に入れるのは、喩えタッパーウ� ��アやロック式のケースに入れ子にしたとしても、遠慮したいところです。管理人自身は生物好きではありますが、そういう風に一緒に入った冷凍庫のものを食べたいとは思いませんし、正直なところ無理です。此は、管理人が神経質すぎるということもあるかもですが、普通の人ならば猶のこと、冷蔵庫に一緒に食品を入れたくないと思ったとして無理からぬことではないでしょうか。清潔かそうでないかは別の問題でして、これはダメな人には本当にダメなので、家族や同居人の事を慮って、専用のものを購入しましょう。理屈としては、そうですね、ペットのお皿は、洗ったら清潔だから自分が使っても平気か?という問題に似ているのではないでしょうか。結論は個々人の自由だと思いますが、たとえとして管理人は厭だし、清潔� �からという理由で遊びに行った時にそんな食器使われたら帰ります(そんな人がいるのかどうかは知りませんが)。
冷凍マウスは一ヶ月から、最長でも二ヶ月で使い切る量が理想的とされています。正確なところは管理人は知らないですが、管理人自身はどうかというと、なるべく一ヶ月以内に消費するように努めています。長くても二ヶ月以上保存するということは無いのではないかと。ですから、飼育を始めるにあたり必要とされるサイズは小さいものになるでしょう。そうなると、自然、直冷式のものになると思います。正直なところ、筆者は直冷式の冷蔵庫は好みではないのですが、誰もが大量のマウスをストックする訳でもないので、飼育規模に合わせると、小さいものになるのは致し方ないところです。安価なもので� �いかと思いますが、但し、どんなものを選ぶにしろ、自動霜取り機能がオフに出来るものを購入したほうがよいです。自動霜取り機能がついていると、つまるところ定期的に冷蔵庫の中の温度があがってしまうわけで、冷凍マウスの保存の観点からあまり宜しくないという話があります。手間ではありますが、定期的にマウスを使い切るようにして、その時に手動で霜取りをするようにしましょう。
余談としては、筆者は冷凍マウスを通販で購入しているわけですが、やはりクール便と雖も、多少溶けて到着する感があります。そういう場合、「急速冷凍(急冷)」機能があると、到着したものを速やかに冷凍出来て、よいのではないか、と思っているのですが、購入したマウスは一ヶ月ぐらいで全て使い切っているので、そこまで� ��を遣わなくても良いのかもしれません。
◇空調設備若しくは冷温室
或る意味、冷蔵庫よりも遥かに重要です。冷蔵庫は定期的にショップに買いに行くという荒技で乗り切る事が出来なくはないですが、こちらは乗り切る方法がありません。
温度調節が可能であることは、四季折々のある日本の何処に居を構えていたとしても絶対条件と言えましょう。寒いところならば冷却設備は要らないでしょうが、暖房設備が必要ですし、逆もまた然りです。
エアコン、若しくは最低限でもガラス温室は必要です。冬には温かく、夏には涼しくする為に、冬にはヒーターを、夏にはクーラーを用います。
冬季には最低気温を21-22℃以上、夏季には最高気温を28℃以下に維持出来る環境です。重要なのは、フィルムヒー ターなどの接触面の温度が上記の温度なのではなく、ケースに満ちている空気の温度が上記の、乃ち(21-28℃)範囲であるようにしなくてはならない、ということです。幾ら地面が温かくても、空気が寒ければ風邪を引いてしまいます。
ホットカーペットの温度が30℃だったとしても、部屋の温度が5℃の状況で掛け布団がなかったら人間は普通風邪をひきます。それと同じことと考えれば分かり易いでしょうか。
エアコンを使えば、春と秋の切り替え時期を別にすれば、困る事は殆どないでしょう。
温室を用いる場合、飼育ケースを入れ子にして使う訳ですが、冬には優れていますが夏には意味がありません。真夏日でも室温が一日を通じて28℃を超える事がないという土地柄ならば話は別ですが、そうでないならば甲虫� ��洋蘭飼育に用いられる冷却能力のある温室(アミールなど)が便利かと思います。ただ、中々に高価なので、夏場だけはエアコンで管理してしまう、というのが個人的にはよいのではないかと思います。
温室には温室ヒーターとサーモスタット、それから忘れてはならないものとして、ファンを設置します。ファンは成る可く静かなものがよく、空気の循環用として用います。神経質な個体では、ファンの音に怯えてしまうこともあるので、餌食いが安定しない時などはファンを止めるか、ファンから離れた場所にケースを移動するなりするとよいでしょう。それから、風は絶対にケースに直接当たらないようにします。ケースに当たればそこだけ温度が下がったり上がったりしてしまうし、通気口に当たっていると常に風が流れる 事になり乾燥し過ぎてしまう危険性があるからです。
もう一つの方法としては、大きなガラス水槽を用いて、プレートヒーターに加え、昼間はバスキングライトを、夜は保温球を使うという方法があります。テラリウムで飼育するということです。ただ、此は外気温があまりにも低い場合は空気全体を上げられないので、やはり冬場は或る程度の空調管理が欠かせなくなります。
水槽テラリウムを金属ラックなどに収め、金属ラック全体に自作のビニールカバーをして、簡易温室を作るという手もありますが。この場合は、保温は温室用のヒーターを使うとよいでしょう。此の方式のメリットは、ケースに水槽を使い綺麗にレイアウトすることで、動物園や水族館さながらのインテリア的な楽しみ方が出来るという事です。個� ��的には、水槽で飼育しつつ、エアコンで温度管理をするのが、一番楽しい飼育の仕方だと思っています。
◇ピンセット
竹製、ステンレス製などありますが、煮沸消毒するならばどちらでもよいでしょう。管理人は煮沸が面倒で、加熱消毒するタイプなので、ステンレス製を使っています。ただ、先があまりにも尖ったものは、蛇がアタックしてきたときに逆に蛇に怪我をさせてしまいかねないので、先は丸くなっているものがよいでしょう。
◇飼育ケース
プラスティック・ケース、水槽型テラリウム、コンテナ、衣装ケース、アクリルケースなど様々です。要諦は脱走されないことであり、此を満たすならばどんなものでも問題はありません。そう言えば、昔は木製の箱で、ステンレスの網を張って通気口及� ��観察窓としていたりとか、そういうのを使っていた事もあったようですね。現在でも、大型のボア、パイソンにはそうしたケースが用いられる例もあるようですが、此処では150cm程度のヘビでありますので、そうしたケースを用いる意味は殆どないでしょう。
一般的なのはプラケと呼ばれるプラスティック・ケースでしょう。幾つかのメーカーから出ていますが、窓が填め込み式ではなくスライド式になっているNISSOの製品を推奨します。填め込み式は蓋の閉め忘れはもとより、開けられるということをヘビが覚えると、鼻先を押し当てて開けてしまう事があること、開かない場合でも、ヘビがそれを試みようとするあまりに鼻先に怪我を負う危険性があるからです。とはいえ、CB個体の場合は、そうした試みは殆どしないかと思い� ��すが。
◇空調、或いは温室、保温器具、ファン
空調(エアコン)或いは温室は必ず必要です。特に外気温が10度を切るような環境で飼育する場合、プレートヒーターでは何の訳にも立ちません。基本的には空中温度が20度以上在るべきで、触ってケースのシェルターの内部が温かいなら大丈夫、ということは絶対にありません。気温が数度の時に炬燵さえあれば健康的に生きていけるかと云えば、そんなのはあっさり風邪をひくでしょう。
空調で部屋まるごと温度管理をするか、温室用ヒーターとファンを使い温度管理をしたガラス温室の中に、飼育ケースを入れ子にするか、でしょう。
もう一つは、大きな水槽を用いて、プレートヒーターに加え、昼間はバスキングライトを、夜は保温球を使うという手はあ� �ます。ただ、此は外気温があまりにも低い場合は空気全体を上げられないので、あまり推奨は出来ません。
そういう場合は、水槽テラリウムを金属ラックなどに収め、金属ラック全体に自作のビニールカバーをして、簡易温室を作るという手もあります。保温は温室用のヒーターを使うとよいでしょう。
◇水入れ
ヘビというのは、かなり水を飲みます。水分が足りないのに餌をやれば、消化液が作れないので吐き戻しますし、無理に消化しようとして心不全になることもあるそうです。水は常に綺麗なものがあることが望ましく、最低でも二日から三日で必ず容器を洗って交換するようにしましょう。
理屈としては、コップを用意し、そこに水を張り、その状態でテーブルの上に置いておいて、いつまで飲む気が するか?という問題だと思います。数時間後なら飲めますし、翌日でも、まぁ飲めなくもないでしょうが、二日たったら、管理人などはもう飲みたくない気がします。
水は、別段浄水である必要性はありません。というか、浄水の方が、実のところ早く悪くなってしまうんですよね………不味いのは確かですが、塩素水でも心持ち長持ちするというメリットはあるんですよね。まぁ、そういう水を飲むとダメージを受けてしまうデリケートなヘビもいるのですが、コーンスネークは問題ないようです。
それから、水入れには水浴びの場所という意味も多少あります。コーンスネークでは、脱皮前などにたまに水入れに入っている様子が確認出来ます。とはいえ、脱皮前に水入れに入らなければ脱皮不全になるということは、殆ど 起こりえません。例外は、冬季にエアコンを使っている場合などで、日本の冬の湿度不足とエアコン使用による湿度低下が重なると、極度に湿度不足になり、そういう時に幼体などでは有り得るかもしれません(成体は冬眠しているのでこの限りでない事が多いです)。脱皮不全に関しては詳しくは後述します。
そうした観点から、全身が入る程度の水入れが望ましいとも言えますが、成体になれば脱皮不全にもなりづらくなるので、成長に従い、躰に対する比率としては小さくなっても問題はないようです。
但し、小さすぎると、ケースの中でひっくり返されてしまう事があり、非常に疲れるので、ひっくり返されない重さ(水の重量でひっくり返せないのでも構いません)のものを用います。CB個体が主流であるコーンスネ� ��クにあっては、熱湯消毒はさほど重要なファクターではないので、タッパーウェアなども使えます。
個人的には陶器製のものが好みなのですが、陶器製のものというか、蓋が出来ないタイプの水入れは、引出式ケースに入れておくと移動時に水が零れることになり、これまた面倒です。お奨めなのは床材を吸湿可能な素材にすることですが、必ずしもそれが可能なわけでもないので、タッパーウェアのように蓋がある容器の蓋に、円切りカッターで丸い穴をあけるとよいでしょう。穴の直径は6cmもあれば問題はありません。
この形にしておくと、振動で水が撥ねても、零れる事が少なくなるので、乾燥系床材を使う場合は有用です。テラリウム飼育をする場合は、見栄えの観点から、岩を模して作られたものや、テラコッタの� ��木鉢の底に栓をしたものなどがお薦めです。意外に使えるのが、陶磁器で、小鉢などにはテラリウムに配置しても違和感のないものが少なくないです。それから、ビオトープ用として販売されている陶磁器なども見栄えが良く、使えるかと思います。
◇床材
新聞紙、クッキングペーパー、ウッドシェイブ、ウッドチップ、パームピート、赤玉土といった土などが使えます。それぞれの床材に一長一短があります。どのような方向性で飼育するかでも異なって来ます。
・新聞紙、クッキングペーパー
コストパフォーマンスがよいという話があるのですが、どうでしょう……まぁ、新聞を読む家庭の場合はそうかもしれませんが……
床材を一度に全部交換出来るので清潔さという観点からは優れているのかも� �れません。ただ、どうもインク特有の匂いが好きになれないし、そもそも新聞紙をケースの数だけ折る作業が億劫なので使わなくなってしまいました。
・ウッドチップ、ウッドシェイブ
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