高校講座HOME >> 化学 >> 第15回 中和滴定
中和滴定
講師:東京学芸大学附属高等学校教諭 岩藤 英司
中和反応がおこることを知っていると、あらかじめ濃度がわかっている塩基や酸の水溶液を用いて、濃度のわからない酸や塩基の水溶液の濃度を求めることができます。これを中和滴定といいます。中和滴定について詳しく学びましょう。
中和滴定
今日のテーマ
こんにちは! 今日のテーマ 岩藤英司 先生
みなさん、こんにちは。
今回のテーマは、「中和滴定」。講師は、岩藤英司先生。実験は、田中義靖先生です。
中和滴定とは、中和反応を利用して、酸または塩基の濃度を求める実験をすることです。
<今日のテーマ>
@ 中和の量的関係
A 中和滴定
B 中和滴定曲線
ポイントの1 中和の量的関係
箱の中の水素イオンはいくつ? 水酸化物イオンの数がわかれば求められます
まず、酸と塩基の量の関係について考えていきましょう。
箱の中には金属製の水素イオンの模型が入っています。箱を振ると、何個かの音がします。
では、この箱の中に入っている水素イオンの数を知るにはどのようにしたらよいでしょうか。
最大と最大のものである
そこで、スポンジでできた水酸化物イオンの模型を用意しました。
水酸化物イオンには水素イオンが結合する穴があり、水素イオンと結びつくと箱を振っても
音がしなくなります。
5つの水酸化物イオンを箱に入れたところで、音がしなくなりました。
水素イオンと水酸化物イオンは1対1で結びつくので、水素イオンは箱の中に5つ入っていたということに
なります。
塩酸と水酸化ナトリウム水溶液 同じ濃度なら同じ体積で、濃度が半分なら2倍の体積で中性に
0.1mol/Lの塩酸と、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用意しました。
水酸化ナトリウム水溶液を使って、この塩酸100mLを中和するには、何mLの水酸化ナトリウム水溶液が
必要でしょうか。
同じmol濃度なので、水酸化ナトリウム水溶液を100mL、塩酸に入れました。
pH試験紙で確認すると、緑色になりました。中性になったということがわかります。
次に、0.05mol/Lの塩酸と、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用意しました。
この塩酸100mLを中和するには、水酸化ナトリウム水溶液何mLを混ぜればよいでしょうか。
水酸化ナトリウム水溶液の方が、濃度が2倍濃いので、塩酸100mLに、水酸化ナトリウム水溶液を半分の50mL加えると、ちょうど中和されるはずです。
pH試験紙で確認すると、緑色になりました。中和したことが確認できました。
実験の結果を図で確認しましょう。まずは始めの実験です。
塩酸や水酸化ナトリウム水溶液の濃度はどちらも0.1mol/Lで、体積は100mLでした。
酸と塩基それぞれの物質量は、0.01molで同じになっています。
2番目の実験では、塩酸の濃度が0.05mol/Lだったので、水酸化ナトリウム水溶液の体積は50mL、
つまり1000分の50Lでちょうど中和しました。どちらも物質量が0.005molで同じになっています。
ポイントの2 中和滴定
オージオは何年に考案されました?
濃度のわからない塩酸を正確に量り、水酸化ナトリウム水溶液を滴下 うっすらと赤くなったら中和点
先ほどの式、a×c×V=b×c'×V'を使って中和滴定について学習していきましょう。
例えば、価数aがわかっていて、濃度c'がわからない酸があったとします。
価数bと濃度c'がわかっている塩基と中和させて、どれぐらいの体積ずつ(V,V')が反応したかがわかると、
酸の濃度cを計算で求めることができます。
これを実験することを、中和滴定といいます。
中和滴定をしてみましょう。
濃度のわからない塩酸を用意しました。
ビュレットには、濃度 0.0930mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用意しました。
この場合、塩酸の体積を正確に測る必要があるので、ホールピペットという器具で体積を量ります。
指示薬のフェノールフタレイン溶液を1滴加えます。
ビュレットの活栓を開いて、水酸化ナトリウム水溶液を滴下していきます。
滴下した瞬間、フェノールフタレインが赤くなりますが、はじめのうちは混ぜるとすぐに消えます。
ビュレットの目盛りが14.00mLになったところで、色が薄く残りました。ここが中和点です。
目盛り1.00mLから始めたので、使った水酸化ナトリウム水溶液は13.00mLということになります。
滴定を数回行い、得られた平均値は12.90mLでした。
式に代入して濃度土cを求めます
実験で得られた結果を式に代入して、塩酸の濃度を求めましょう。
塩酸と水酸化ナトリウム水溶液は、どちらも価数が1価なので、aとbには1を代入します。
塩基の濃度は0.0930mol/L。酸の体積は10.0mL。塩基の体積は12.90mLでした。
代入にすると、1×c×10.0 = 1×0.0930×12.90となり、酸の濃度は、c ≒ 0.120mol/Lということが
わかります。
このようにして、中和滴定で、濃度の分からない酸の濃度を求めることができるのです。
悪い人は、良い意思決定を行う理由
ポイントの3 中和滴定曲線
中和滴定曲線 塩酸の場合 黒い点線は酢酸
酸に塩基を加えていくとpHが変化していきます。
左の図は、塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を滴下していったときのpHの変化を表したグラフで、
このような曲線を、中和滴定曲線といいます。
縦軸がpHの値、横軸は加えた水酸化ナトリウム水溶液の体積・滴下量です。
塩酸は、pHが1からスタートします。
水酸化ナトリウム水溶液を滴下すると徐々にpHが大きくなり、あるところで急にpHの値が上がります。
中和点付近では、水酸化ナトリウム水溶液1〜2滴でこのように、急激な変化がおこります。
これをpHジャンプといいます。
フェノールフタレインは、pH8〜10のあたりで赤く変化し、これ以上pHが高くなると、ずっと赤くなったまま
になります。
右の図は、酢酸に水酸化ナトリウム水溶液を滴下したときの中和滴定曲線のグラフです。
酢酸は弱酸なのでpH3からスタートします。
pHが急激に変化する中和点は、フェノールフタレイン溶液が変色する領域に入っています。
つまり、この場合もフェノールフタレイン溶液を指示薬に使うことができるのです。
BTB溶液 メチルオレンジ溶液 フェノールフタレイン溶液
●指示薬を変えて中和滴定!
フェノールフタレイン溶液以外のさまざまな指示薬を使って、中和滴定ができるか実験しました。
食酢を10倍に薄めたものをコニカルビーカーに用意します。
ビュレットには、0.100mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液が入っています。
BTB溶液、メチルオレンジ、フェノールフタレイン溶液の3種類の指示薬を使って滴定してみました。
BTB溶液では、はじめは酸性を示す黄色が次第に緑色に変化していきました。
そして、青色になったところで滴定終了。食酢の濃度は0.0741mol/Lとなりました。
メチルオレンジでは、はじめは酸性をしめすオレンジ色が黄色になったところで滴定終了。
濃度は、0.0680mol/L。
フェノールフタレイン溶液では、混ぜても赤色が消えなくなったところで滴定を終了。
濃度は、0.0723mol/Lとなりました。
指示薬によって濃度の値にばらつきがでました。
実は、10倍に薄めた食酢の濃度は、0.0707mol/Lが正しい値でした。
フェノールフタレイン溶液を指示薬にしたときが、一番正解に近い値です。
指示薬の変色域と中和点
指示薬によって結果に違いがでたのはなぜでしょう。
中和滴定曲線の図に、メチルオレンジとBTB溶液の変色域も書き込みました。
点線で示した酢酸の中和滴定曲線では、メチルオレンジの変色域が中和点から大きくはずれています。
また、BTB溶液では、緑から青への微妙な変化を見分けることが難しくなります。
このように中和滴定を行うには、適切な指示薬を使うことが必要になります。
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